父と夏休みの宿題とゴーヤーチャンプルー
それは料理に燃えていたあの1年前の夏。
やっぱりお盆に帰省した私は、母から
何か作るように言われ、夏休みの宿題として
とある料理を披露した。
その料理は父曰く
「母が作るより美味い」ということだったのだが、
父は私を溺愛しすぎのため、そんな意見は
まったくあてにならない単なる贔屓目かと思われた。
・・・あれから1年。
そんなことがあったことすら、私はまったく
覚えていなかったのだが。
今年はお盆は諸事情で田舎に引きこもっている
訳に行かなくなった私は、一足早く、たった2泊
3日で帰省することになり、夏休みだというのに
やたらと空いているあさまに乗って田舎にたどり
着いたわけだが。
それは、たどり着いた日の夜のこと。
仕事から帰ってきた父は、テーブルの上に
並んだ料理たちを見て母に言った。
「あれ。取れたゴーヤーは?」
父は、100%、本日の夕食はゴーヤーだと
思っていたような口ぶりである。
「りぼんが帰ってきたんだから、ゴーヤじゃないのか」
そんな父の台詞に呼び起こされる、去年の
夏休みの宿題。
「あ。また私にゴーヤーチャンプル作らせる感じ?」
そんな父の台詞に母は淡々と答える。
「それは明日ね」
・・・かくして、またもややってきた、夏休みの
宿題、ゴーヤーチャンプル作り。
次の日。
田舎で一人でお留守番なんて、ウイルスぶり!
と、午前中はひたすらドラクエの宝の地図を
制覇し続け、午後は妹のマンガ本を読み漁って
いたら、不覚にもワンワン泣いてしまった私は、
夕方、がんがんに昼寝をし、結局1年ぶりの
ゴーヤーチャンプルーの予習はまったくしないまま、
お夕飯作りタイムに突入。
「とりあえず、ゴーヤー切って」
と母に言われ、うろ覚えの中、なんとなく薄切りにし、
水につけておく。
・・・ってか、ゴーヤーチャンプルーの具って、
何があったっけ?
あれから1年間、ゴーヤーチャンプルーどころか
ほとんどしっかり料理をしていない私はもう
しどろもどろ。
かすかな記憶をたどって、豚肉と卵を冷蔵庫から
取り出したが、何かが足りない予感。
「豆腐じゃない?」
あ!豆腐!
ゴーヤーチャンプルーといえば、豆腐!
と、かなり手際悪い感じで豆腐を取り出し、
うろ覚えで水気を取って。
じゃ、いためるか、と思った私を、母は止めた。
「先に豆腐いためるんでしょ?」
思い出した。
その手順は去年私が料理教室で習ったのを
主張しまくったやつだ。
全部一緒にいためると豆腐の形が
めちゃくちゃになっちゃうから、ってことで
料理教室で教わった、「女子としての知恵」。
そうだ。先に豆腐だ。
そして、豆腐の形が崩れないように、何らかの
お粉をつけて炒めたような・・・
「小麦粉!」
本当にあれが小麦粉だったかどうか、定かでは
ないのだが、とりあえず粉といえばおそらく小麦粉。
私に言われるがまま、母が小麦粉を持ってきて、
パフパフとつける。
うん。それっぽい。
(つっこみ役不在の我が家)
合ってるのか間違っているのかあやしい状態に
なった豆腐を炒め、一度皿にあげて今度は肉と
ゴーヤーを炒める。
「味付けどうしようか?」
と母。
・・・覚えてねー。。。
塩コショウすればとりあえずいいんじゃない?と
思ったんだが、なぁんか芸がないような気もするし。
(料理は芸じゃない)
「うーん、じゃあ・・・鶏がら!」
チャーハンでも、野菜炒めでも、鶏がら入れれば
なんとなくそれっぽくなる、と昔々に教えてくれたのは
母であるので、結局母から見ると芸がないことには
変わりないはずなのだが、おそらく母も「芸」を見たい
とは思っていなかったらしく、「鶏がら」の意見は
すんなり受け入れられた。
かくして、塩コショウと鶏がらを入れて味を調え、
豆腐と卵を入れたところで、うろ覚えゴーヤー
チャンプルーはなんとかかんとか完成した。
ちょうどそのとき父が帰宅し、父の目の前に
並べられるゴーヤーチャンプルー。
日本酒を片手にゴーヤーチャンプルーを口にする
父。
・・・無言。
おい。
お前が作れというから作ったんだぞ。
と無言のだけど強いまなざしを父に向ける娘。
「どう、おいしい?」
ストレートに聞いちゃった母。
「・・・うん、美味い」
それが心からの台詞であるのか、贔屓目なのか、
はたまた母の強要のせいなのか、それはよく
分からないけれど、そうして、今年も私は夏休みの
宿題をどうにかクリアしたのだった。
それにしても。
と、知らない間にうっそうと茂ってしまった
家庭菜園を見ながら考える。
父が家庭菜園で育てているゴーヤーは
私が帰ってくるお盆に、毎年確実に
実をつけることになっており、おそらく
父はそうやって実ったゴーヤーを見ながら
思い出すのだ。
また私が帰ってくることを。
そうして、ゴーヤー料理が夏休みの宿題
リストに毎年並ぶことになる。
しかしながら私の作る料理は2年レンチャンで
ゴーヤーチャンプルー。
さすがに3回目は何か違うものを作らないと
いけないのではなかろうか。
課題がゴーヤーであるだけに、その悩みは
思いのほか深い。
・・・まぁゴーヤーは仮に今年までになったと
しても、夏に女子力を試されるのは、そろそろ
終わりにしてほしい。
そう、思ったやさぐれアラサーの部屋に、
ふわっと、初秋の風が舞い込んだ、冷夏の
とある夜のことだった。














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