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2010年6月 5日 (土)

告白

5月の終わりのとある火曜日。
私は朝からやきもきしていた。

お給料日に届いた試写会の当選はがき。
当然ありがたく使わせてもらうつもりでいたのに、
その日の朝は、なんだか怪しい雲行き。
(いや、天気がどうこうじゃなくて)

最近の政権みたいに、その日の予定は刻一刻と
変わっていき、そのたびに、「試写会だめかも」
「試写会いけるかも」とやきもきしていた午後5時。

「やっぱり国会は延期します」という
お知らせがやってきた。

政権が変わらないなら特に今日はもうここにいる
必要がない、と即判断し、1時間休、という斬新な
仕組みを使って会社を飛び出した。

向かった試写会は、松たか子主演「告白」

本屋大賞を受賞したという本作品は、新宿じゅうの
本屋で平積みになっていたが、あんだけすごい勢いで
平積みされると、こちらも萎えてしまうもので、だから
いつも予習重視の勤勉な私が、原作を読まずに
映画を鑑賞するという、珍しいパターンとなった。

雑然とした教室で、誰も聞いていないスピーチを、
松たか子がやっている。

最初は取り留めもない話が、だんだん核心に
迫ってきて、そして言うのだ。

「娘は事故で死んだのではありません。
このクラスの生徒に殺されたのです」

これが、松たか子の告白。

と、ここまで、私の話すあらすじを聞いた友達はみんな
声をそろえて聞く。

「え?なんでそんなこと分かったの?」

違う。みんな違うんだって。
そういう謎を解いていくサスペンスじゃないのだこれは。

この話は、ここから始まる、松たか子による
娘を殺した「犯人」たちへの復讐劇

あ、ちょっと違う。
正確には、この話をしているときには、もう1つ目の
復讐劇が封を切られた後であったわけだが、松たか子は、
「犯人」たちに、殺すよりももっとひどいかもしれない
「生き地獄」をじわじわと与えてゆくのだ。

そしてこの後は、「犯人」であるところの生徒や
それを取り巻く生徒、またはその家族などが、
それぞれの立場で順番に、時には折り重なるように
「告白」をしていくのだが、やっぱり圧巻は、
松たか子の「告白」である。

決して噛まず、決して泣かず、決して声を荒げない。
(いや、最後の最後で1回だけ荒げるけど)

なのに、彼女の告白には、なんていうか、戦慄
してしまうのだ。

「下妻物語」とか、「嫌われ松子の一生」とかの
監督の作品であるため、ごてごてこってり演出過多で
音楽過剰であるわけだが、そんなもの、ものともしない
ほどの、松たか子の朗読力(告白力?)。

2時間弱、次から次へと繰り広げられる絶え間ない
復習劇には、始終鳥肌立ちっぱなしで、その辺の
ホラー映画とかより全然怖い。

と、映画はとにかく、復讐の嵐を肌で感じる
エンターテインメントの世界である。

一方、映画の興奮が忘れられずに、ついに平積みから
1冊抜き取って購入してしまった文庫本のほうは、
本であるからして、スピード感というものとは無縁の
作品である。

ただ、話の構成は、映画と同じく、ト書きは一切ない、
オール「告白」で成り立っている。

映画なら、まだ、相手がしゃべらなくても、反応が見えるから、
まったく一人になることはないわけだが、本になると本当に
一人で勝手にしゃべっている状況である。

でも、反応が見えない分、その人の言い分をはっきり
「聞ける」というか、「読める」

そして、映画では完全に意味のわからなかった少年たちの
正体が、少しだけ見えてくるのだ。
(結局、幼い子供を最終的に殺してしまう、その心情は
どんなに考えてもよくわからないけども)

一番悪い、というか、一番狂ってるのは、犯人の
生徒たちであるが、その周りの一見「フツーの」生徒たちも、
周りの大人たちも、みんな少しづつ頭おかしい。

いや、おかしいっていうのは、周りから傍観しているから
分かるのであって、当事者になってみたら、私だって
きっと頭おかしくなるのだと思う。

最初は、少年法の穴をつつく目的のお話かなぁ、とは
思うけど、きっと、この話の本質は、そんな回りくどい
ことじゃなくて、もっと単純に「身近にある狂気」
描いた物語。

最近、ドラマでも映画でも「どーせこうなるんでしょ?」と
予想のついてしまう話の多い中、久しぶりに、結果の
わからない話に翻弄される楽しみを感じるお話であった。

告白 告白

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