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2010年4月25日 (日)

怒れるおばちゃん

春とは到底思えないほどの寒空の下、
私は1台のタクシーを、若干郊外の駅前で
捕まえた。

さむー、と口癖のように言いながら、乗り込んだ
私に、タクシーの運ちゃんであるところのおばちゃんは、
「暖房入れるかい?」と聞いてくれた。
いい人だ。

「いやー、景気悪くて大変だねぇ!」と急に
ガンガントークを始めるおばちゃん。

「はぁ。そうですねぇ。事業仕分けも始まりますし」

景気悪いと事業仕分けがどう結び付いたのか、
今となればすっかり忘れてしまったが、まぁ何かの
はずみで、私が事業仕分けの話を振ってしまったのが
いけなかった。

「いやぁ、民主党っていうのもいろいろ問題あるけど、
事業仕分けだけは正解だね。あれやるだけでも政権
変わってよかったってもんだよ」

とか言いながら、ちらつかせるスポーツ紙のとある記事。

「こいつだよ!こいつが天下りの『天皇』なんだってさ!」

と、おばちゃんは急に怒りだし、そいつの年収がいくらだの、
退職金がいくらだの、スポーツ紙の記事の情報を抜き出しては
お怒りになっている。

「それにしても、こんなことがあってまでなにも言わないなんて、
最近の若者はおとなしい!おとなしすぎるね!」

は、はぁ。草食ブームですから、大変申し訳ございません。

と、その後もおばちゃんの怒れる話はどんどんエスカレート。
どこがどうなってそっちの方向に行ったのか分からないが、
話は中国の万博の話に飛び火し、「中国人は怖い」という
ホラー的ストーリーになったと思ったら、話は急に、本日の
本題に入るのだった。

「うちの息子の嫁がさぁ、ハルピンの女なんだよ」

ハルピン、という、聞きなれない地名に、私は思わず、
「はる、ぴん?」と聞きなおす。

それが、運の尽き。

おばちゃんはどうやら、私がこの話に興味を持ったと
思ってしまったらしい。

「いやぁ、うちの息子、なかなか結婚できなくてさぁ・・・」

と、長い話が始まったわけだが、要約するとこんな感じである。

・なかなか結婚できない息子が、ある日突然、中国に
「嫁取りツアー」に行くと言い出した。
・息子はブローカーに約350万
(いや、おばちゃんはもっと
細かい正確な数値を言っていたが)
支払って、意気揚々と
嫁取りツアーに出かけて行った。
・そして息子は、ちゃっかり中国人の嫁を連れて帰ってきた。

ここで、私は思わず、
「そういうツアーで本当にお嫁さん、見つかるもんなんですねぇ」
と、相槌を打った。

ところが。ここからが話の肝である。

・嫁は、中国に残してきた親がいるとのことで、日本で
働いたお金を全部中国に送っている。
息子の貯金も気付いたら全部嫁が降ろして、中国に
送ってしまった。

「嫁はねぇ、結婚したかったんじゃなくて、日本に稼ぎに
来てるんだよ」

はき捨てるおばちゃん。

全然現実味のない話に、ただただ、「はぁ。」と相槌を
打つしかない。

そんでもってさらに。

「でさぁ、8年たっても子供ができないからどうしたのか
聞いたら、嫁が避妊してるらしいんだよ」

ちなみに、嫁は子連れで嫁いできているので、
別に子供ができないとかそういう事情ではないんだそうな。

「だからさ、私言ってやったんだよ」

と、ここから衝撃的な話が始まった。

曰く、

・じゃあさ、嫁に、子供出来たら100万やるって
言ってみたらどうだい?と息子にアドバイス。
・怪訝な顔をしながらも、嫁にそれを伝える息子。
・と、それから1ケ月・・・

「本当に、子供出来たっていうんだよ」

え?まじそんなきな臭いことあるんですか?
もはやぐうの音も出ない私の前に、どんどん積み重ね
られていく、意味わかんねー話。

・子供できたと言われたからには、100万支払わない
わけにもいかないので、息子に100万渡してやった親で
あるところのおばちゃん。
・しかし、金を渡してからたった1週間後。。。

「流産したんだってさ」

へ?

なになに?ちょっともう何が何のことやら。。。
それってもしかして、子供、できてなかったとか
そういうことは。。。
なんて、関係者も分からないネタばらしを、
私ができるはずもなく。

「でさぁ、流産したっていうから、100万返してって
言ったわけよ」

まぁ、結構つめたい対応ともとれるが、もともとその
100万は、いわば「子供手当」だったわけで、
大金であるからして、返してくれと言っちゃう、タクシーの
運ちゃんたるおばちゃんの気持ちも分からなくもない。

「それがさ・・・」

ここからの展開は皆さんのご想像のとおりである。
金が戻ってくるはずもなく。。。

「私もさぁ、もう孫はあきらめたわ。」

怒りがあきらめに変わって、おばちゃんは最後にこう言った。

「たぶんさぁ、向こうに好きな男でもいるんじゃないかと
思うんだよね」

真相がどうなのか、子供はできたのかできてなかったのか、
送金しているのは親なのか、それとも「好きな男」なのか、
それは今のところ、その「ハルピンから来た嫁」しか
知らない。

と、そんな深刻な話がひと段落したところで、タクシーは
目的地に滑りこんで…

「ごめんねー、こんな話しちゃって」と、傍らのスーパーの
袋的なものをがさがさあさるおばちゃん。

「これ、あげるよ」と差し出されたのは、
1足のピンクの靴下・・・

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ああああ。ありがとございます。

最後まで頭が整理できないまま、とりあえず
金を払ってタクシーを降りる私。

アラサーになっても、まだまだ私の知らない世界って、
きっと山ほど、あるんだろうな。

がんばれ、怒れるおばちゃん。

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