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2010年4月 3日 (土)

ソラニン

「年度末なんでぇ、夕方の懇親会はいけませーん」
と、その日、朝から言い訳を言い連ね、上司が
出掛けるのを見送り、業務時間が終わった途端、
私は外に飛び出した。

年度末が忙しいのは本当なのだが、
その日は、そんな年度末と(どうせつまんねぇ)懇親会を
おしてでも、どうしても行かなきゃいけないイベントが
あった。

あたったのだ。試写会が。
「ソラニン」の試写会が。

あおいちゃーん、今すぐに会いに行くからねー!
と、東京メトロじゃなくてJRで向かい、友達と
合流した私は、友達をせかして渋谷を走る。
(遅れたの私なのに)

そうして駆け込んだ夜7時。
さらにそこから30分のトークショーを経て、
「ソラニン」は始まった。

2年目のOL、芽衣子は、学生の時から
付き合っている、フリーターの種田と同棲中。
種田は学生の時からやっていたバンドを
あきらめきれず、
芽衣子も誰にでもできる
仕事を淡々とやり続ける毎日に飽き飽きで、
ある日勢いで会社を辞めてしまう。

一方種田は、再び本格的にバンドをやろうと
思い、「ソラニン」を作ってレコード会社に
持ち込む。

しかし、そんな中種田は突然……

っていう、まぁありがちなストーリーの
青春映画なのだが、逆にいえば、
ありがちだからよいのかもしれない。

学生時代の、土手、サークル、ぼろい部屋。
バーベキューに花火に大きな青空。

逆に、大人になってからの、淡々とした毎日と
曇り空。

ディティールは多少違っても、若い頃なんて、
たぶんみんなこんな感じだ。

だから、見たことないはずの景色なのに、
自分がそこにいたような気がする。

自分の話じゃないのに、どこかしら自分の話のような
気がしてくる。
(いや、あおいちゃんみたいにかわいくないことは
百も承知で)

だから、何にもないようなシーンが急ににじんで
見えてくるのだ。

そしてやってくるクライマックス、あおいちゃんの
ライブシーン。

どうやらあおいちゃんは、自分では歌が不得手だと
思ってるんだそうだが、あおいちゃんが不得手だったら、
「歌しか得意なものがない」とか言っちゃってるうちの
妹はいったいどうしたらいいんだ。

あおいちゃんが歌う歌、それが「ソラニン」で、
もとはアジカンなのであるが、ソラニンっていうのは、
ジャガイモが芽を出すときに必要な毒素のことで、
だから、つまり、種から芽が出るってことで、
ってことはとどのつまり、種田から芽衣子が卒業
するための歌である。
(と、私は理解している)

ここに来るまでの約2時間で、あまりにも
どこかで見たことあるようなシーンのオンパレードに、
完全に思い出に浸っていた私。

そんな私に、最後の最後で、あおいちゃんはどすんと
重い一言を投げつけた。

さよなら。それもいいさ。
どこかで元気にやれよ。
さよなら。僕もどーにかやるさ。
そうするよ。

いつまでも浸ってないでさよならしろよ、と
あおいちゃんに男らしく送り出される私。

さよならなんてひどいなぁ、とわんわん泣いて、
すっきりした私たちは、映画館を出た途端
けろっとラーメン屋に向かう。

ラーメン食べながらふと擡げる、明日への
不安。
懇親会断ったのに、全然残業してないのが
ばれちゃってこっぴどくしかられたらどうしよう。

映画ですっかり学生の気持ちを思い出した
私は、のんきに麺をすすりながら、
「あおいちゃんみたいに辞表たたきつけてみる?」

それもいいさー

ふと聞こえたような気がするあおいちゃんの声。

んーー、とスープを一口飲んでから、大人の私は
ふっと笑って小さくつぶやいた。

さすがにそれはないでしょ。と。
いつまでも、現実に目をそむけてはいられないのだよ、
大人というものは。

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