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2009年1月26日 (月)

闊歩する男

それはある日ののどかな午後のこと。

少額だけども確実な受注をもらって、
私はおやつ時の空席のめだつ山手線に
座って、まどろんでいた。

電車はそろそろオフィスのある駅に滑り込む。
やれやれ。帰ったら決裁あげないとねーとか
思いながら、なかなか下りる準備をする気に
ならないまままどろんでいると、進行方向の
ほうにある車両と車両の間のドアが、ガラッと
開いた。

あ。

やってきたのは久しぶりだけど見慣れた顔の
(今では)課長様。

お久しぶりです!元気ですかぁ?

って、私は声をかけようとしたんだ。

しかし。
課長様は、まっすぐ前を見て、毅然として
まるで普通の道を歩いているかのごとく、
動いている電車の中を、進行方向とは逆に
闊歩してゆく

その姿を見て、私は思い出した。

もう5年も前のことになるのか。
まだ私が新入社員だった頃。
私と、(今や)課長様は、あの頃は一緒に闊歩して
いたのだ。

それは、ユーザ訪問に行く道中でのこと。
会社の最寄駅からひと駅地下鉄に乗ってから、
JRに乗り換える
、というのがユーザオフィスまでの
行き方であるが、そのひと駅地下鉄がちょっと
くせものであった。

私たちが最寄駅の地下に下りて行くと、そこは
電車の一番後ろの車両
でも、ひと駅先のJR乗り換え口に一番近いのは、
電車の一番前の車両

だから、電車にぎりぎり滑り込んで一番後ろの
車両に乗り込んでしまうと、ひと駅先で降りてから、
ホームの端から端まで歩いているうちに、次の電車が
やってきてしまうのだ。

ユーザとの打ち合わせまで結構ぎりぎりで会社出たのに、
それではもったいない。
と、(あの時は課長じゃなかったけど今は)課長さんは
おそらく思ったんだろう。

毎週1回決まって向かうユーザオフィスへの道中、
地下鉄に乗っているひと駅の間、私たちは歩き続けた。

ひと駅先のホームに着いてからの乗り換えの時間を
短縮するために、私たちはひたすら歩いた。

動いている電車の中を、課長様は何事もないかのように
後ろをゆく私たちはどたばたとたとたと騒々しく

そんな4人の奇妙な姿を、乗客の皆さんは、
奇異の目でみていたものだった。

そんな5年前のこと、私はすっかり忘れていたのに、
たぶん、課長様は毎日変わらず、忙しい毎日の中、
電車の中を闊歩していたんだろうと思った。

5年間、私は何にも忘れていないつもりだった。
でも、確実に何か忘れてきてしまっている。
たとえばほら、電車の中でも、ほんの少しの
時間短縮でも、お客様の所に遅れずにたどり着く
ためなら、人目をはばからず目標に向かって
闊歩するあの心意気。

そんなことをまた座ってボーっと考えていたら、
電車は駅にたどり着く。

久しぶりにうれしくなって、おそらく同じ駅で降りたはずの
課長様の影を探して走るけど、課長様は電車の中より
さらに速いスピードで歩いて行ってしまったのだろう。
横断歩道まで追いかけても、結局再び彼の姿を見ることは
なかった。

覚えているはずですっかり忘れてしまった
昔の私。
それを少しだけ思い出した私は、もう彼の姿は
すっかり見えなかったけど、新しい気持ちで
青になった横断歩道を走った。

そうそう。
仕事しなくちゃね!

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» 愛犬が散歩中に飛びつきをしなくなり、横断歩道でも「待て」が出... [ペット犬のしつけ教室に通わない遠藤和博のしつけ方/散歩トイレ/無駄に吠える/噛み癖/おしっこ/留守番/食糞/訓練方法]
「疑問いっぱいで試してみた・・」 最初は、不安だらけでした。本当にこのマニュアルにお金を出して 解決するのか?っと… 失礼な書き方だとは思いますが、本当に疑問 でした。 でもそれもあっという間に解消でした。本当に分かりやす くまとめてあって飽きやすい私でも気長にしつけをすることが出来 ています。ありがとうございます。 27�... [続きを読む]

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