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2008年12月31日 (水)

若者商法

若者商法
商品知識もない若者営業マンが、若いということだけを
武器にして、ほぼ自分の親と同じ年頃の異性に対して
半ば強引に物を売る商法。
ときに失敗しても、新人なので分かりませんでした、と
弁明すれば、客も途中から息子を怒っているような
感覚に陥ってしまい、本格的なクレームになりにくいという
とんでもないメリットを持っている。

というのは、私の造語だ。

会社の廊下で、若いお姉ちゃんたちがおじ様方を
捕まえて、保険を次から次へと売っていくさまを見て、
私はこう名づけた。

でも、そんな商法が通用するのは、せいぜい会社の
廊下くらいだと、私はたかをくくっていた。

しかし。
私は発見してしまった。
会社の廊下よりすごい勢いで若者商法にはまっている
被害者を。

それは、ほかでもない、うちの母だ。

年の瀬も押し迫った田舎の夜9時。

街灯もない真っ暗な夜道を歩いて、そいつは
やってきた。

こんな時間に誰なのよ、と、寒い廊下を震えながら歩いて
玄関を開ける母。

しかし、玄関を開けた母の声が、明らかに1オクターブ
高くなった。

あらぁ、どうしたのこんな遅くに。
まぁ入ってよ入ってよ。

妹が、またかぁ、と一言言った。
父も渋い顔。
ん?なに?なんなの?

と、母が玄関から何事か叫んでいる。

ねぇ、定期!定期預金やる人いる?

いやおかあさん、そんな急に定期預金やる人
なんていないでしょ。
大体金利いくらなのよ。

と。
母はどたばたと2階に上がっていき、
どたばたとまた1階に戻っていき、そして
若者に告げた。

じゃあお父さん名義で50万。

え。
いったいお母さんどこから50万もって来たのよ。
そして、どうしてそんな即決で定期預金できるのよ。

私の混乱した頭とは裏腹に、寒い寒いと
手をこすりながら茶の間に戻ってきた母親は、
いたって冷静な顔をしていた。

曰く、この夜中に訪ねてきた彼は、なんちゃら
信金の新入社員君であり、うちに定期預金の
お願いにきたんだそうな。

で、この信金の定期預金の金利はすばらしく
よいことを知っていたので、父名義のお金で
さらに50万、定期預金に入れたのだと。

金利を聞くと、年利0.85%(20%は税金なので、
実質0.65%)というので、確かに、このゼロ金利
政策の折、悪くないように聞こえる。

でも、冷静に分析すると、やっぱり母の言うことは
なんかおかしい。

まず、母はパートだけど、れっきとした
違う銀行の行員であり、あのおにいちゃんは
ライバル会社の人間である。

それに、どんだけ金利がよくても、そんな年末の
夜中にわざわざ訪ねて来るってことは、明らかに
まだ今月のノルマが達成できてないってことで、
新入社員だから大変なのかもしれないけど、
絶対に腕のよい営業がやる行為ではない。

そんな、駆け出しの腕の悪い営業に、即決で
50万、預けるいい年した大人がいるだろうか。

ひたすら考えて、私はひとつの結論に達した。

やはり母は、若者商法にひっかかっているのだと。

しかし、まさか若者商法だなんて夢にも
思っていない母は、ねずみ講的に、私たちの
資金も狙ってくるのだ。

曰く、若者はとりあえず現金を持っていったので、
後日、父の通帳に50万入れて、通帳もって来て
くれるのだと。

そのときにまた若者は家に来るので、私も100万くらい
定期に入れてみたらよいじゃないかと。

え。
100万ですか。
ミリオンセラーですか。

私も若者商法の餌食にされるのではないかと
思った私は、とりあえずガードかけてみることにする。

いやお母さん、私そんなにお金持ってきてないのよ。

当たり前だ。
たかが実家に帰省するために、札束もって帰ってくる
娘がどこにいる。

そんな私をあざ笑うかのように、母は言った。

おろせばいいじゃない。と。
そして、銀行員の知識をこんなときばかり私に
見せ付けて言うのだった。

100万はおろせないかも知れないけど、99万9000円
だったらいけると思うの。
そんだけおろしたら、後は1000円持ってきたお金から
出して、お兄ちゃんに預けなさい
と。

確かに、この金融危機の状況で、株はとっくの昔に
信用できないし、今から投資信託始めようっていう
タイミングでもないだろうと思われた。

そうしたら、このタイミングで一番いけてる金融商品は、
もしかしたらふつーに定期預金だったりするんじゃなかろうか。

でも、さすがに100万は。。。

次の日。

葛藤の中、私はATMにいた。

急患しか受け付けていない病院の、1台しかないATMの前で、
まだ悩んでいた。

後ろには妹が、こちらもこの前50万定期預金に入れてしまったと
いうのに、母に言いくるめられて並んでいた。

ぶつぶつ言いながら私も妹も金を下ろし、
無言で家に着いて年賀状など作りながら待っていると、
チャイムが鳴った。

さて。運命のお兄ちゃんとのご対面である。

母が思いを寄せているその兄ちゃんは、どんだけイケメンだろうと
予想していた私の期待を大きく裏切り、ぬぼーっとした、大きな
体格の若者であった。

それでも、もう封筒は玄関脇に置いてあるし、
こんな大金持っているのも嫌だし、イケメンであろうがなかろうが、
これはもうおにいちゃんに持ってってもらわなければならない。

昨日渡した父の50万を通帳に入れてもらったのを確認して、
私は切り出した。

「あのぉ、ついでに私名義で50万、5年定期でお願いしても
よろしいでしょうか。」

「あ。。。
はい。ご新規でしょうか。」

君のノルマにこんだけ一家そろって協力してあげてるんだから、
もう少しちゃんと喜びなさいよ。

そうやって少しだけ悪態をつく私に気づく様子もなく、
お兄ちゃんは50万の束を2回数えて確認し、バッグに
収めた。

一家で2日で130万。

こんだけ協力すればもう出血する血もないよってかんじだけど、
多分お兄ちゃんはまた月が変わればやってくるんだろう。

お母さんどうしよう、今月もノルマやばいんだよって、
そのちょっと困ったような顔フル活用して。

ああおっかない、若者商法。

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